福岡県認知症医療センターの初期症状

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診断・治療・ケアについて

認知症の症状

認知症の症状は、脳の変化に伴う機能低下によって現れますが、とりわけ認知機能(外界を正しく認識し、記憶し、判断し、行動するための機能)が低下するようになります。認知症の症状は大きく分けて、中核症状と周辺症状(BPSD:Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)の2つに分けられます。なかでも記憶力は早期の段階から低下することが多いことが特徴です。
認知症の症状

中核症状の主なもの

記憶力の低下(記銘力の低下)
見当識(現在の時間や場所、人物など自分が置かれた状況を判断する能力)低下
実行機能の低下(物事を計画する、順序立てる、組織化する、判断する、抽象化するなど)
失語
失行
失認

中核症状の主なもの

BPSDの主なもの

暴言や暴力、介護拒否・抵抗、もの盗られ妄想、被害妄想、昼夜逆転、不眠、夜間せん妄、帰宅願望、徘徊、夕暮れ症候群、尿や便の失禁、不潔行為、弄便、食行動異常、異食、収集癖、

認知症の症状チェック(認知症かどうかの目安としてご活用ください)

家族がつくった 認知症 早期発見の目安(「認知症の人と家族の会」)
http://www.alzheimer.or.jp/?page_id=3107

初期認知症徴候観察リスト

認知症を引き起こす代表的な疾患について

1.アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症 認知症の原因となる疾患で最も多く、全体の約半数を占めます。脳に老人斑(βアミロイド蛋白)の沈着や神経原繊維変化(タウ蛋白の異常リン酸化)といった変化が起こり、脳神経細胞の数が減ったり、機能が低下することによって生じます。70歳以上の高齢者に多いですが、中には40歳代などの年代でもおこること(若年性アルツハイマー型認知症)が知られています。この疾患の治療について、現在では完全に治癒することは出来ませんが、症状の進行を遅らせる効果が期待出来る治療薬があります。

2.脳血管性認知症

アルツハイマー型認知症に次いで多い疾患です。原因として脳を栄養する血管が詰まったり(脳梗塞)、破裂したり(脳出血)することで、十分に血液を送ることが出来なくなり、脳神経細胞が死滅してしまうことによって生じます。この疾患は高血圧や糖尿病、脂質代謝異常症などの生活習慣病や不整脈などの心臓病と密接な関係があることがわかっており、また過度の飲酒や喫煙も原因となるため、これらの治療をきちんと行い、規則正しい生活を送ることが予防や症状の進行を遅らせるためにも大切とされています。

3.レビー小体型認知症

3番目に多い認知症疾患です。この疾患特徴としては、パーキンソン症状(前屈姿勢、手足の震え、歩行障害、筋肉のこわばりなど)の他に、実際には存在しないものが見えるといった幻視をしばしば認めます。またもの忘れ等の認知症症状も良い時と悪い時の波が大きいことも特徴の1つです。その他に立ちくらみや便秘などの自律神経症状、失神、うつ症状を伴うこともあり、多彩な症状を認めます。治療についてですが、現在完全に治癒することは出来ませんが、一部の漢方薬や認知症治療薬(保険適応外)を使用することで、症状が軽減することが期待できます。

4.前頭側頭型認知症

病名の通り、脳の中で、前頭葉、側頭葉といった部位が侵されることによって生じる病気です。多くは65歳より以前の初老期に発症するとされています。この病気の症状についての特徴は、もの忘れは目立たず、人格や行動面に現れたり(身だしなみに頓着しない、抑制が欠如し遠慮がなくなったり、暴力やふざけ、落ち着きのなさがみられたり、万引きなどの軽犯罪を引き起こすこともあります。また、社交性がなくなった、自発性がなくなったり、同じ動作が繰り返し行われる、また甘いものや刺激の強いものを好んで食べるなどの食行動の変化などがみられます)、また言葉の障害が早期から目立つようになります。個人差はありますが、このような症状が続く場合、早めに専門医に受診するようにしましょう。

認知症の診断について(早期発見・早期診断が大切です)

認知症の中には、発症を予防できるものや治療可能なものも中にはあります。しかしながら治療可能な認知症でも、治療が遅れれば完全には症状は改善しません。また残念ながら認知症の多くは、根治が望めませんが、症状の進行を遅らせたり、適切に治療・ケアを行えば、部分的とはいえ症状を改善することは可能です。そのためには認知症では、早期発見と早期診断が極めて大切です。「認知症?」と疑われたら、早めに医師の診察を受けましょう。
認知症の診断方法についてですが、認知症の原因となっている疾患をはっきりと定める診断を確定診断と言います。この診断を行うためには、脳を直接みて調べる検査(病理診断)が必要ですから、生前にこの検査を行うことは出来ません。一般的に認知症の診断を行うには、まずは認知症であるかどうか、どのようなタイプの認知症であるのかを、問診、神経心理検査、血液検査、髄液検査、画像検査(頭部CTやMRI等)などを必要に応じて行い、その結果から推定して行くことになります。これを臨床診断といいます。認知症は異なるタイプの認知症が合併することもありますし、症状経過に伴い、臨床診断が異なることもあります。また確定診断と臨床診断が結果的に異なる場合もあります。

認知症の予防、治療・ケアについて

認知症については、まずは予防対策が極めて重要とされています。認知症疾患で多いものとして、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症がありますが、いずれも糖尿病や高血圧などの生活習慣病と密接な関係がある(リスクファクターとなる)ことが知られています。そのためには、バランスのとれた食事をきちんと規則正しく適量を摂り、散歩などの有酸素運動を日頃から心がけて行くことが大切です。また良好な睡眠をとり、日々のストレスを軽減し、毎日を笑顔で過ごして行くことや、知的な趣味や様々な好奇心をもって行動することも良いとされ、地域での活動・行事にも、楽しんで参加していただくこともお勧めしています。
認知症の治療・ケアについてですが、日々医療が進歩する中でも、残念なことに現在未だに特効薬は存在しませんが、症状の進行を遅らせたり、また適切に治療やケアを行うことで、部分的ではありますが症状を軽減することは可能です。認知症と診断されたら、まずはきちんと医療機関へ受診や介護を受けられるように、ご家族や周囲の方々、地域で協力して支えて行くようにしましょう。また日頃認知症患者さんのケアに当たっている介護者のご負担も常に考えて行くことも大切です。介護者の方は決して一人で抱えて悩まれないように、地域包括支援センターや専門医療機関、介護関係機関など様々な相談窓口をご活用してください。また介護者のご負担を少しでも減らせる工夫を行って行くためにも、ご家族や周りの方々、地域でお互いに協力して行きましょう。

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